旭川旅 前編|三浦綾子と塩狩峠をたどる誕生日ひとり旅
2026年8月1日

自分の誕生日。
本当はパートナーと一緒に過ごす予定でしたが、あいにく仕事が入ってしまい、今年は一緒に過ごせないことが判明しました。
それなら、ひとり旅に出よう。
最初に考えていたのは、以前使った四国バースデーきっぷで、まだ回りきれていなかった場所へ行くことでした。四国にはまだ行きたい場所が残っていて、それもきっと楽しい旅になったと思います。
でも、せっかくの誕生日。どこかで「なにか大きなことをしたい」という気持ちがありました。
心の中を探っていくと、ふと出てきたのが、小さい頃に読んだ三浦綾子さんのことでした。
三浦綾子さんゆかりの場所をたどるなら、旭川。そして、塩狩峠。
ちょうど季節は11月下旬。塩狩峠は毎年12月から3月末ごろまで冬季閉鎖に入ります。行くなら、今しかないのかもしれない。
そう思った瞬間、目的地は北海道・旭川に決まりました。
さらにちょうどその頃、YouTubeチャンネル「スーツ 旅行 / Suit Travel」で、旭川を紹介する観光動画がアップされていて、それも背中を押してくれました。
北海道の中心に存在する大都市「旭川」の謎を知る旅!(スーツ 旅行 / Suit Travel)
※提供:(公社)北海道観光機構道北地域分科会・あさひかわ観光誘致宣伝協議会
こうして、私にとって初めての北海道、初めての旭川旅が始まりました。
日程は、11月22日から25日まで。冬が本格的に始まる直前の、北海道ひとり旅です。
大阪から新幹線で羽田空港へ、そしてAIRDOで旭川へ
北海道へ向かうルートは、大阪から新幹線で東京方面へ出て、羽田空港へ向かうことにしました。
この行き方を考えるときに参考にしたのが、「スーツ 旅行 / Suit Travel」の動画でした。旅慣れている方の動きを見ていると、初めての場所へ向かう不安が少しやわらぎます。
関西から北海道へ飛ぶなら関西の空港を使う選択肢もありますが、今回は動画を見ながら「このルートで行ってみよう」と決めました。
羽田空港からは、AIRDOに乗って北海道へ向かいました。
大阪から新幹線で羽田へ。そして羽田からAIRDOで北の大地へ。旅はもう、新幹線に乗ったところから始まっていました。
誕生日に、ひとりで北の大地へ
誕生日にひとり旅をすることは、少しさみしいようでいて、どこか自由でもありました。
誰かと予定を合わせる旅ではなく、自分の心が向いた場所へ行く旅。
「北海道に行く」というだけでも、私にとっては大きな一歩でした。しかも初めての北海道が、札幌ではなく旭川。観光地として有名な場所をなぞるというより、自分の中に残っていた本の記憶をたどる旅になりました。
小さい頃に読んだ物語が、大人になってから旅先を決めるきっかけになるなんて、少し不思議です。
でも、旅の理由って、案外そういうものなのかもしれません。
昔の自分が心にしまっていたものを、大人になった自分が迎えに行く。そんな気持ちで旭川へ向かいました。
到着した日の夜に
旭川に着いた日の夜は、地元の焼き鳥屋さんへ。
初めての北海道、初めての旭川。知らない土地に着いたばかりの夜に、あたたかいお店でごはんを食べられるだけで、少しほっとします。
この日は、ご一緒した方といろいろな話をしました。帰り際に名刺をいただいて、そこで初めて「そんな方だったんだ」とびっくり。肩書きを知らないまま話していたからこそ、気負わずに語り合えた時間だったのかもしれません。
旅先で誰かとゆっくり語り合う時間は、観光名所を巡る時間とはまた違う思い出になります。
お店のことと食べたものは、後編の旭川グルメ編にまとめます。
2日目|冬季閉鎖前の塩狩峠へ



今回の旅で一番行きたかった場所は、塩狩峠でした。
11月下旬の北海道。冬はもうすぐそこまで来ています。毎年12月から3月末ごろまでは冬季閉鎖になると知り、「行くなら今しかない」と思いました。
北海道の広さも、寒さも、土地勘も、何もかも初めて。少し不安はありましたが、それ以上に「このタイミングを逃したくない」という気持ちが強かったです。
2日目の午後、バスに乗って塩狩峠へ向かいました。目的地は、塩狩峠記念館です。
ここでは、三浦綾子さんの世界にどっぷり浸ることができました。館内は撮影できなかったので、写真に残せたのは外観だけ。それでも、建物の前に立っただけで「ここまで来たんだ」という実感がありました。
三浦綾子さんの作品の中でも、私が一番好きなのが『塩狩峠』です。
最初に読んだのは『氷点』でした。そこから三浦綾子さんの作品に触れるようになり、特に『塩狩峠』は、実話をもとにしていることの衝撃が大きくて、中学生だった私に深く残りました。
生きること、罪悪感、人をゆるすこと。そういう重たいテーマを、キリスト教文学として初めて強く意識した作品でもあります。
記念館には、晩年病気だった三浦綾子さんが、ご主人に口述筆記してもらっていた場面を体験するコーナーもありました。実際に体験してみると、これがなかなかハード。言葉を生み出すこと、それを誰かに託して残していくことの重さを、少しだけ身体で感じた気がしました。
誕生日に、自分の原点のような本の記憶をたどって、北の大地へ向かう。この旅は、ただ北海道に行く旅ではなく、自分の中に長く残っていたものを確かめに行く旅でした。

帰りはちょうどよい電車がなく、一駅北の和寒駅で休憩することに。知らない土地で列車を待つ時間も、旅の一部です。和寒駅でひと息ついてから、列車に乗って旭川駅へ戻りました。



休館日の三浦綾子記念文学館と、雪の外国樹種見本林

実はこの旅では、三浦綾子記念文学館にも行きたいと思っていました。
ところが、行こうとした日は休館日。
中に入ることはできませんでしたが、周辺の雪景色があまりにもきれいで、そのまま外国樹種見本林を歩くことにしました。
静かな雪の中を歩いていると、ふいに物音が。何だろうと思って見てみると、リスがいました。
思いがけない出会いに、少し息をのむような気持ちになりました。文学館には入れなかったけれど、この雪景色とリスに出会えただけでも、ここまで来てよかったと思えました。



後悔したくなくて、OMO7旭川へ

これも、旭川の観光動画を見たことがきっかけのひとつでした。動画の中で旭川の街や滞在の楽しみ方を見ているうちに、「せっかく初めて北海道へ行くなら、最後はここに泊まってみたい」と思うようになりました。
本当はそのまま帰る予定でした。でも、三浦綾子記念文学館が休館日だったこともあり、このまま帰ったらきっと後悔する。
そう思って延泊を考えたところ、OMO7旭川 by 星野リゾートを予約することができました。
実はこれが、私にとって初めての星野リゾート体験。名前は知っていたけれど、実際に泊まるのは初めてです。誕生日のひとり旅の締めくくりに、少し特別な宿を選ぶ。それだけで、旅全体がぐっと思い出深いものになる気がしました。
OMO7旭川では、街中を案内してもらうイベントにも参加しました。雑貨店などのかわいいお店や、旭川ラーメンのことなど、旭川らしさをとてもわかりやすく説明してもらえて、動画で見ていた街が少しずつ自分の旅の景色になっていきました。
ホテルライフって、こんなにも素敵なんだ。チェックアウトぎりぎりまで居たくなる理由が、少しわかった気がします。旭川は家族を大切にする街なのだそうで、家族連れにもおすすめしたくなるホテルでした。
朝ごはんのことは、書き出すと止まらなくなりそうなので後編にまわします。
最終日|三浦綾子記念文学館へ

最終日の午前中、あらためて三浦綾子記念文学館へ向かいました。
前日に入れなかった場所へ、もう一度行く。そのために延泊したようなものだったので、ようやく中に入れたときは、旅の目的がひとつ静かに結ばれたような気持ちになりました。
OMO7旭川のチェックアウトは13時。ギリギリまで荷物を置かせてもらい、身軽な状態で文学館へ行けたのもありがたかったです。
旭川は、好きな作家の足跡をたどる旅先としても、とてもよかったです。
ちなみに、『氷点』の舞台になった喫茶店「ちろる」にも行きました。
蔦の絡まるレトロな洋館で、扉を開ける前から「ここだ」とわかるような佇まいでした。本を読んでいたときに頭の中で想像していた景色に、こうして実際に立てるというのは、なんとも言えない気持ちになります。

旭川をあとにして
三浦綾子記念文学館を訪れたあとは、OMO7旭川に預けていた荷物を受け取り、14時台のジェットスターで成田へ向かいました。
最後までぎゅっと詰まった、11月の北海道ひとり旅でした。
まとめ|誕生日に、自分の心が向く場所へ
当初の予定どおり、四国をめぐる旅にしていたら、それはそれできっと楽しかったと思います。
でも、「なにか大きなことをしたい」と思って、自分の心の中を探った結果、旭川にたどり着いたことには意味があった気がします。
誕生日は、誰かに祝ってもらう日でもあるけれど、自分が自分のために時間を使う日でもある。
初めての北海道、初めての旭川。小さい頃に読んだ三浦綾子さんの記憶と、冬季閉鎖前の塩狩峠。休館日だったからこそ見られた雪の外国樹種見本林、思いがけないリスとの出会い、そして後悔したくなくて決めたOMO7旭川への延泊。
この旅は、47都道府県のマスを埋めるだけではなく、自分の中にある大切な記憶をもう一度たどり、最後まで自分の心が向くほうへ進む旅になりました。
次は、旭川で食べたものをまとめた後編を、お届けします。